ヴェニスに死す(Tod in
Venedig) 20回目の公演 2005年6月22日(水)
》 ジョン・ノイマイヤーによる死の踊り、トーマス・マンの小説から自由に発想して《
テープ録音
音楽 | ヨハン・セバスチャン・バッハ リヒャルト・ワーグナー |
衣裳 | ジョン・ノイマイヤー ぺーター・シュミット |
振付 | ジョン・ノイマイヤー | 舞台装置 | ペーター・シュミット |
照明 | ジョン・ノイマイヤー | ピアノ | エリザベト・クーパー |
グスタフ・フォン・アッシェンバッハ 振付家 |
イヴァン・ウルバン※ |
アッシェンバッハの助手 アッシェンバッハの母 タジオの母 |
ラウラ・カッツァニガ |
アッシェンバッハのフリードリッヒ大帝 | ピーター・ディングル※ |
アッシェンバッハのバルバリーナ | エレーヌ・ブシェー |
アッシェンバッハのコンセプト | シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ |
アッシェンバッハのスケッチ | セバスチャン・ティル アーニャ・ベーレンド、ジョージーナ・ブロードハースト クリステル・チェンネッリ、アンナ・ハウレット、ステラ・カナトウリ、 カロリナ・マンクーソ、大石裕香、リサ・トッド、マリアナ・ザナトー、 ディナ・ツァリポヴァ アントン・アレクサンドロフ、ロリス・ボナニ、ホアキン・クレスポ・ロペス、 オーカン・ダン、ボイコ・ドセフ、 エミル・ファスクートディノフ、 ヨハン・ステグリ |
若きアッシェンバッハ | コンスタンティン・ツェリコフ |
写真家 | ウラディミル・コシチュ |
さすらい人、ゴンドラ漕ぎ ダンス・ペア、ディオニュソス 理髪師、ギター弾き |
イリ・ブベニチェク、オットー・ブベニチェク |
タジオ | エドウィン・レヴァツォフ |
タジオの3人の妹 | アンナ・ハウレット、カロリーナ・マンクーソ、リサ・トッド |
ヤチュー、タジオの友人 | アルセン・メグラビアン |
ホテル・ベインの客 | マリア・コウソウニ、カーステン・ユング アーニャ・ベーレンド、フィリパ・クック、カトリーヌ・デュモン ゲイレン・ジョンストン、イリーナ・クロウグリコヴァ、アンナ・ラウデール、 ミリアナ・Vracaric、ディナ・ツァリポワ、 アントン・アレクサンドロフ、ロリス・ボナーニ、ステファン・ボウゴン、 アントナン・コメスタッツ、オーカン・ダン、ボイコ・ドセフ エミル・ファスクートディノフ、セバスチャン・ティル |
海岸の若者たち | アントン・アレクサンドロフ、シルヴァーノ・バロン、 ホアキン・クレスポ・ロペス、ボイコ・ドセフ、服部有吉、 ヨハン・ステグリ、コンスタンチン・ツェリコフ |
バッカスの饗宴 | アーニャ・ベーレンド、エレーヌ・ブシェー、ゲイレン・ジョンストン マリア・コウソウニ、アンナ・ラウデール ステファン・ボウゴン、アントナン・コメスタッツ、 エミル・ファスクートディノフ、 カーステン・ユング、セバスチャン・ティル |
死を運ぶ人 | シルヴァーノ・バロン、ウラディミル・コシチュ、 コンスタンチン・ツェリコフ、パーシヴァル・パークス※※ |
※ ロイド・リギンズ病気のため配役変更
※※ ハンブルク・バレエ学校の学生
maddieさんにお願いして感想を書いていただきました。感謝。
以下はmaddieさんの寄稿です。(S)
ロイド・リギンズ降板! ロイド以外のアッシェンバッハなどまったく考えても見なかったので、本当に驚きました。イヴァン・ウルバンが替わりにアッシェンバッハに配役されていました。ということは、こちらもとても楽しみにしていたイヴァンの甘い優美なフリードリヒ大王が見られない!! ダブルでショック、次はいつ見られるかわからないのに…第一イヴァンは若いからアッシェンバッハのイメージではないのでは、などあれこれ気をもみましたが、すぐにこれは杞憂に過ぎなかったことがわかりました。イヴァンは神経質でいつもピリピリと気が立っているような、近寄りがたいアッシェンバッハを熱演。理知的な孤高の芸術家、冷たく鋭利な印象が際立っていました。
完璧に理性の人として生きてきたアッシェンバッハの心の変遷と、その一方で感情を律して作品を完成させようとする意思との葛藤がとてもストレートで印象的に描かれていました。理性で制御不可能な情愛とか官能とかの、まさに人間らしい感情の目覚めに戸惑いながらあるいは否定しながらも次第に身をゆだねて、最後には完全に開放して行く、その触媒のような役目を果たしているのが、幼い頃の母親との思い出であり、享楽的なヴェニスへの旅であり、そして最終的には美少年タジオとの出会いだった、という気がします。 その節目でブベニチェック兄弟が狂言回しのようにかかわっているのがとても興味深かったです。バッカスのシーンなどは、びっくりするほど官能的で、抑圧していた感情の爆発を感じました。
感情が深くかかわる場面で使われるワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」はとても美しく、アッシェンバッハの心の変遷に沿っていていいなあと聞き入ってしまいました。特にピアノ用にリストが編曲した「愛の死」はほんとうにドラマチックに盛り上げてくれますね。エリザベート・クーパーの熱演も素晴らしく、しばらくこの曲が頭を離れませんでした。
エドヴィン・レヴァツォフの少年タジオは健康的で明るい元気な美少年でいつも遠く(未来?)を見つめているような表情がとても印象深かったです。タジオといえば映画で演じたビョルン・アンドレセンのイメージが強くて、どこか病的な翳りのある、謎めいた美少年という先入観念がしっかりと出来上がっていましたので最初に見たときは自分の中で違和感がありました。 今回改めてこの作品を見て、アッシェンバッハに人間らしい感情を取り戻させるキィーパーソンとしては、タジオは快活ではつらつとした若さが感じられる少年であるべきだと思いました。
繰り返し何度でも見たいと作品なのですが、来シーズンは2度しか上演されないようですし、Ballett-Tageの演目にも入っていません。残念です。本当に今度舞台を見られるのはいつになるのでしょうか。
( maddie )